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大好きなおばけちゃんを独り占めしたい!でも笑ってほしいんだ
かっぱちゃんとこおにちゃんとおばけちゃん
作/絵・マリマリマーチ
かっぱちゃんは、おばけちゃんが大好き。
こおにちゃんも、負けずにおばけちゃんが大好き。
でも、おばけちゃんは、かっぱちゃんもこおにちゃんも
大好きだから本当は一緒に仲良くしたいんです。
でも、そんなおばけちゃんの気持ちがわからない
かっぱちゃんとこおにちゃんは、どうしても
大好きなおばけちゃんを独り占めしたくて
おばけちゃんを取り合ってしまいます。
ぐいぐいぐい ぐいぐいぐい
右と左からひっぱり合うと、
おばけちゃんの体がみよーんと伸びて……。
まさかの衝撃的なしかけ絵本!
小さな子どもさんでも、
お友達を挟んで三角関係ってありますよね。
でもラストは、三人仲良くまあるくきれいな『和』になりますよ♡
マリマリマーチ
1985年、千葉県市川市生まれ。東京在住。
立教大学文学部日本文学科卒業。
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。
日本児童出版美術家連盟、
イラストレーターズ通信会員。
絵本作品に「ジャミちゃん」(シロクマ社)、
紙芝居作品に「いろいろ めしあがれ!」(教育画劇)などがある。
『かっぱちゃんかこおにちゃんかおばけちゃんか』
4歳で年中さんから幼稚園に入ったとき、わたしにはお友だちがいなかったらしい。自分ではよく憶えていないのですが、たしかに幼稚園の頃のことを思い出すと、大体ひとりでいる絵が浮かびます。
だから、『かっぱちゃんとこおにちゃんとおばけちゃん』のような関係が生まれたのは、小学校以降のことだったのだろうと思います。たぶん、かっぱちゃんだったことも、こおにちゃんだったことも、おばけちゃんだったこともあります。
仲良しの子とあそんでいたところに別の子が加わってきて、「ふたりきりであそびたかったのになぁ」と思ってしまったこと。3人で話しているときに、「ふたりにしかわからない話をするのはやめてほしいなぁ」とさみしい気持ちになったこと。ふたりとも大好きなお友だちなのに、両方から「今日はわたしとあそぶって言ったじゃん!」と責められて戸惑ったこと。
人間関係は3人以上になってはじめて、自分の立ち位置を考えたり、バランスをとったりすることが試されるのだろうと思います。ちいさい子どもさんたちが「ふたりきりの世界」から「3人以上の友人関係」を築いていくことになったとき、はじめはきっと、すこし戸惑ったり、癇癪を起こしたり、さみしくなったりすることがあるのだろうと思います。でも、仲よしが増えると、ふたりきりのときには見えなかったことが見えてきたり、たのしめることもぐんと増えて多様になっていきます。好きの気持ちにブレーキがきかないとき、つい自分だけのものにしたくて取り合いをしてしまうけど、物でも人でもひっぱりあいっこしたら、その大切なものが傷ついてしまいます。ひいては自分もつまらないし、なんだかモヤモヤ・・・。それよりみんなで仲よく輪になれば、もっとずっとたのしいねって、伝わったらいいなぁと思います。大人の世界でも、みんなが「自分が、自分が」でいたら、争いごとはなくなりませんよね。相手の立場や気持ちを尊重すること、乱暴でないコミュニケーションの方法はいくらでもあると思います。お説教くさくなく、たのしく笑いながら、読んでもらえたらうれしいです。
さいごに、おばけちゃんはおモチみたいな体をしているので「みょーん」と伸びても「ぱっちん」とちぎれても大丈夫なんです。くれぐれも大好きで大切なお友だちのことを「ぱっちん!」なんてしないように、ね。